術式一覧
美容外科における乳房再建、乳輪・乳頭再建とは～Dr.加曾利による解説～
「 ① 乳房再建について
現在、乳がん治療においての性格分類、抗がん剤、ホルモン療法、分子標的薬、センチネルリンパ節などの治療指標の発展により、かつての定型的乳房切断術（乳房皮下組織、乳腺、大胸筋、同側腋窩リンパ節郭清）のような手術はほとんどなくなり、乳房の部分的な皮膚、皮下組織切除による手術（温存療法）が主流になっています。
その中でも、自己組織だけの乳房再建を是とし、私が大学病院在籍中は、腹部や背中の皮膚、皮下脂肪、筋肉を乳房欠損部に移動させた再建を専ら行い、若手医師達に指導してきました。しかし、再建された乳房だけを見れば良い結果であっても、皮弁を採取したところの傷跡、後遺症としてのヘルニアなどを考えると、女性という立場の患者さん本人にとって、現在は必ずしも最善とは思えないのではないと考えています。それでは、エキスパンダーという風船で不足皮膚を伸ばした上でのシリコンバックだけの再建が良いかというと、やはり最善とは言えません。現在は、皮膚伸展により薄くなり過ぎない程度までの皮弁を皮膚欠損部近くある組織から移動させ、失われた乳腺の補填にシリコンバックを使用して再建することが、保険診療の範囲を超えた美容外科の観点から良好な質感、形態を獲得できる術式ではないかと考えています。
もちろん、それぞれの患者さんにより状況が異なりますので、相談の上、適切と思われる術式をご提案したいと思います。
② 乳頭再建について
乳房再建の次の段階として乳頭再建があります。
出来上がりを左右するのは、乳頭の盛り上がり（隆起）と乳頭、乳輪の色調です。もちろん対側乳頭からの分割移植、複合組織移植も選択肢に入りますが、私個人としては、安定した美しい隆起を得るため局所の皮弁による形成術の後、色調獲得のため会陰部からの植皮術を推奨しています。」
乳房再建手術の種類について～Dr.外薗（ほかぞの）による解説～
「乳房再建における具体的な手術の方法には、欠損や変形した乳房に対してダイレクトに乳房再建を行う１期的再建と、一旦は組織拡張器（別名：エキスパンダー）を大胸筋下に入れ、皮膚を十分に引き伸ばして乳房をおさめるスペースを確保した後、そのスペースに人工物（シリコン製インプラント）や自家組織（有茎広背筋皮弁：ご自身の背中の脂肪・筋肉）を移植する２期的再建があります。それぞれメリット・デメリットがありますので、お気軽にお尋ねください。
また、脂肪注入による乳房再建を行う方法もあります。腹部や下腿、臀部などから脂肪を採取し、ご希望のサイズになるように大胸筋上、大胸筋内、大胸筋下とミルフィーユ状に移植して形態を整えます。こちらのメリットとしましては、体に大きな傷がつかないことと、基本的には日帰り手術が可能である点になります。場合によっては複数回の施術が必要となります。」
Dr.石原が答える美容外科の毎日Q＆A
乳房再建、乳輪・乳頭再建についてよくいただく質問
患者さんからの質問に、加曾利先生、外薗先生がお答えしています。
- 乳房再建は日帰り手術でも行えますか？
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乳房再建では、エキスパンダー法で徐々に乳房のボリュームを増大していったうえでシリコンを入れる方法、残った皮膚に余裕があって最初からシリコンを入れる方法、周囲の皮膚や皮下組織を利用しながらシリコンを入れる方法などがありますが、いずれも、日帰り手術は可能です。（回答者 加曾利要介先生）
手術の内容にもよりますが、基本的には可能です。全身麻酔による手術となるため、ドレーンと呼ばれる管が入った状態で帰宅していただき、ドレーン排液量をご自身で測っていただくことになります。（回答者 外薗優先生）
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- 乳房再建でどのくらいまで大きくすることができますか？
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乳房再建手術では、周りの皮膚を含めた組織を乳房部に移動すする方法を多くとります。豊胸可能サイズはその皮弁の血行動態が安定できる範囲内でのボリュームアップとなります。また、乳がんを患っていない健常側がかなり大きい場合には、健常側の乳房縮小術を行ってバランスをとることもあります。（回答者 加曾利要介先生）
選択する術式にもよりますが、通常はご希望される乳房のサイズまでは問題なく大きくすることが可能で、健側乳房（手を加えていない乳房）にも同時に豊胸や乳房固定（垂れてしまった乳房を吊り上げる方法）も併せて行う、あるいは脂肪注入を併用することで、よりご希望に沿った理想的な再建乳房を獲得することが可能です。
一方で、脂肪注入単独での乳房再建については、残った皮膚の伸展性（伸びやすさ）にもよりますので、元々の乳房のボリュームが大きい場合は、元の形態獲得が困難なこともあります。（回答者 外薗優先生）
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- 乳頭再建には、どこの皮膚を用いるのが一番きれいに仕上がりますか？
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乳房再建に限らず、どこの場所の再建においても再建する部分に近接する組織(皮膚)による再建が質感、色調ともに違和感のない仕上がりにつながります。一般に、かなり大きな自家組織移植による再建の場合は、腹部あるいは背部の皮弁を利用します。いずれにしても、皮弁を栄養する血行動態が確保されていることを確認しながら、また、患者さんの組織性状を考慮しながら選択することになります。（回答者 加曾利要介先生）
健側乳房の乳頭の位置と左右対称な位置の乳房皮膚を用いて乳頭を作成します。局所皮弁という、皮膚を細工して乳頭状の隆起を作成する手法を用います。健側乳房の乳頭のサイズが大きい方は、乳頭を半分ほど切除し、再建乳房上に移植することで乳頭再建を行うことも可能です。また、乳輪を再現する際に、会陰部の皮膚を移植することで色素沈着を伴った乳輪を作成することも可能です。（回答者 外薗優先生）
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- 再建した乳頭は感覚がありますか？
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同部組織の皮弁で高さを確保し再建した場合は触られた感覚は分かりますが、いわゆる性感帯としての感覚や温痛覚は鈍いレベルにとどまります。また、複合組織移植(反対側の乳頭分割移植)の場合は、触られた振動を元々残っている周囲の組織が感知する程度ですので、前者よりも劣ります。再建された乳頭については知覚の質の再建というより形状の再建です。（回答者 加曾利要介先生）
ほぼ感覚はないことが多いです。特に健側乳頭を移植した場合は触覚はありません。（回答者 外薗優先生）
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- 乳頭や乳輪の再建手術に、タトゥーを入れることはありますか？
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乳頭や乳輪の再建は、円柱状形態(高さ)の再建と色調再建とに分けられますが、色調確保は再建された円柱状形態とその周囲の乳輪予定皮膚の表面だけを削り取り、そこに小陰唇などの色素沈着が多い部分の表面を皮膚移植して再現します。しかし、質感は別として、色調確保のためのタトゥーは、不自然さはやや否めないものの、選択肢の一つとして考えてよいものと思います。（回答者 加曾利要介先生）
局所皮弁という、皮膚を細工して乳頭状の隆起を作成する手法を用いる手法で乳頭を再建した後に、メディカルアートの技術を応用した医療用タトゥーを行うことで健側乳房の乳輪・乳頭と同様の色調を再現することが可能です（通常は乳頭再建後6ヶ月経過したところで施術します）。医療用の色素を用いるため、通常はMRI等の検査も問題なく受けることが可能です。ただし、時間経過と共に色素は薄くなってしまうため、リタッチ（複数回の施術）が必要となる場合もしばしばあります。（回答者 外薗優先生）
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